川俣正「夢浮橋ワーク・イン・プログレス2024」

Lieu  : 

関西日仏学館 1Fエントランスホール

9/28 16:00-22:00
9/29-10/26 10:00-17:00
※日月休、10/3休
※10/6(10:00-16:00)は開館

Type : 

2020年からニュイ・ブランシュKYOTOのプログラムとして継続して開催されている鴨川にアートの橋かけるプロジェクト。伝統的な丸太の足場組み立て技術と現代アートの融合作品。今年度はこれまでの活動の紹介とデザインが更新された川俣正の新しい模型を公開いたします。

▶ 関連イベント:9月29日(日) トークイベント
日仏のEXPO 2025〜国際的なイベントにおけるアーティストの役割〜 ②
登壇者:川俣正、岩﨑陽子
会場:関西日仏学館

橋は川に架かる実用品である。橋がなければ川を泳ぐか、船に乗るか、大回りしないといけない。多くの人が利用し、そのほとんどが国や地方自治体によって公共物として管理されている。橋は社会的インフラの代表格であり、社会のコモンズである。一方で、橋は人と人をつなぐ文化的な意味ももっている。

2020年、私たちは京都にアートの橋を架けるプロジェクトを川俣正に依頼した。彼がその模型として形を生み出したのは「未完の橋」(Le pont inachevé)であった。これは橋の形状を取りつつ、中央が少しだけ離れており、断絶がある。川俣はこれを「イマジネーションで渡る橋」と呼んだ。この「未完の橋」の模型は京都芸術センターに展示された。

2021年、私たちは烏丸二条の香老舗松栄堂の駐車場に原寸大の橋の一部を設置した。作品は番線丸太組の伝統的な手法で組み立てられた。以後、すべての「夢浮橋ワーク・イン・プログレス」はこの手法で実施された。毎年丸太材を再利用する循環的手法をとった。この年は日仏学生交流も実施し、「あなたが鴨川に橋をかけるなら」というテーマで想像上の橋を日仏の学生に自由に割り箸で表現してもらうワークショップを開催した。またパリの川俣をオンラインでつなぎ、橋の下で公開レクチャーも実施した。

2022年、私たちは京都市京セラ美術館の旧玄関口に片橋を架けることになった。橋を架けると、エントランスから美術館に入ったり行き来したりする人々が、川を泳ぐ魚のように見えた。多くの市民の目に触れ、意見や感想をもらうことも増えた。この年も「京にかける橋」という一般来聴型シンポジウムを開催した。

2023年、私たちは七条大橋の南側の右岸と左岸の両岸に橋の一部を架けた。構想と模型から三年、完成形ではなく一部分ではあるが、ようやく鴨川にたどり着いた橋であった。この橋を臨む京都市立美術工芸高校でワークショップとシンポジウム「京をつなぐ橋」を開催し、多くの市民に橋のお披露目が叶った。しかしこの橋は三日後に「夢浮橋」の名の通り、夢のごとく儚く姿を消した。

来年2025年、「夢浮橋ワーク・イン・プログレス」プロジェクトは完形で最終実現を迎える。そのため、今年2024年、私たちは橋の最終形を改めて決定する、川俣正の模型制作ワークショップを一般公開する。制作は川俣と未来を担う学生が共に行う予定である。川俣がどのような意味を込め、どのような橋を構想するのか、目が離せない企画である。

岩﨑陽子(キュレーター)

川俣正(かわまたただし)

1953年 北海道出身、フランス・パリを拠点に活動
1984年 東京藝術大学 大学院 博士課程満期退学

1982年 第40回ヴェネツィア・ビエンナーレ、1987年 ドクメンタ8、1992年 ドクメンタ9、1997年 第3回ミュンスター彫刻プロジェクトなどの国際展にて高い評価を獲得し、1998年に東京藝術大学先端芸術表現科の設立に主任教授として参画。2005年横浜トリエンナーレの総合ディレクター、2006年活動の拠点をフランス・パリに移し、パリ国立高等芸術学院にて教授職に就任。アーティストとして欧州を拠点に精力的な活動を展開する。彼の仕事が関わっていく分野は、建築や都市計画、歴史学や社会学、日常のコミュニケーション、あるいは医療にまで及ぶ。

<主な展示と受賞歴>
2000年~越後妻有アートトリエンナーレ(新潟県)
2000年度(財)日本文化芸術財団、日本現代芸術振興賞
2002年 第4回上海ビエンナーレ(中国)
2012年 個展《Under the water》ポンピドゥー・メス(フランス)
2012年度文化庁芸術選奨文部科学大臣賞